ゴムの代わりになるか?熱可塑性エラストマー(TPE)とは

この記事では少し変わったプラスチック成形材料のお話しをしようと思います。

中定樹脂では日頃より様々な樹脂のカラーコンパウンドを発注いただき、ユーザー様のあらゆるニーズにお応えするべく設立当時から多岐にわたる樹脂原料のコンパウンド技術を磨いて参りました。

そんな樹脂の中でも今回は、ゴムのような触り心地や特性を持つ樹脂を一緒に勉強したいと思います。


早速ですが、エラストマーという樹脂をご存じでしょうか?

今や様々な分野で採用されているエラストマー樹脂。

正確には熱硬化性であるゴムなどを含めたものの総称ですがここでは射出成形が可能な熱可塑性エラストマー樹脂について書いていきます。

目次

TPE(熱可塑性エラストマー)とは?

TPEとは、Thermoplastic Elastomersの略で、 ゴムのように弾性をもつ柔らかい高分子素材のことです。一般のプラスチック原料と同様に使用することができ、常温ではゴムのような性質を持ち、軟化するほどの高温状態ではプラスチック原料と同じ性質を持ちます。

一般的には樹脂素材の熱可塑性エラストマーを「エラストマー」と表現し、熱硬化性エラストマーを「ゴム」と表現することが多いです。

熱可塑性であるため、プラスチック成形と同様の成形機を使用することができ、圧縮、押出、射出といった成形が可能となります。さらにゴムなどのエストラマーと違い、劣化しにくく再度リペレット、成形ができるためリサイクルも可能となり、環境に配慮した設計ができるようになっています。

熱可塑性エラストマーも大まかにいくつかの種類があり、それぞれで少し特徴がちがいます。

ハードセグメントとソフトセグメント

TPE が他のプラスチック原料と異なる特性を持つのは、その構造に由来しています。

・ゴム弾性を担うソフトセグメント・最終的な可塑性を担う架橋点の役割を果たすハードセグメント、の2種類以上からなっており一般的に常温ではハードセグメントは集合してドメインが形成され物理架橋点として機能しますが、⾼温になるとドメインは溶融し架橋点の働きが出来なくなり、可塑性を有することになります。

という小難しい仕組みですが、要するに加工性や耐熱、耐薬品など機能性を担うものと、ゴム弾性を担い、硬度や柔軟性などの左右するものが合わさり、常温ではゴムのような性質でありながら一定以上高温になると溶融し、一般的な合成樹脂のようにコンパウンドや成形加工が可能という、とても高機能な樹脂ということです。

熱可塑性エラストマーの特徴

熱可塑性エラストマーとは加硫ゴムなどのエラストマーの性能特性と一般的な成形樹脂材料の加工性を兼ね備えたエラストマー樹脂です。

一般的なゴムの代替品として普及しており、着色が容易な上に他の樹脂と同じように成形後のリサイクルまでが可能です。

TPE(熱可塑性エラストマー)の硬度

TPE製品の用途や性質によっても重要視されますが、カラーコンパウンドにおいても弊社のようなストランドカットシステムを採用している事業者にとっては、硬度が重要となります。

エラストマー全般で使用される硬度とは一般的な樹脂で使用される表面硬度とは違い、材質そのものの硬さや柔らかさを示します。グレードによりそれぞれ硬度があり、それによってコンパウンド時のペレタイズに影響が出る場合があります。

TPE(熱可塑性エラストマー)は弊社でも各メーカーバージン材の販売、そして調色からカラーコンパウンドまでを行なっておりますが、設備上、D硬度以上を持つエラストマーを得意としております。

熱可塑性エラストマーの種類や用途


「スチレン系エラストマー(TPS)」

特にバランスに優れたエラストマー樹脂です。他の種類より軽くて柔らかく、耐低温性が高い。

ごく汎用的に使われ、他の樹脂との相溶性も良く、弊社ではPPの改質材としてコンパウンドに使用したりすることもあります。

その反面、耐熱性や耐摩耗性などに劣るため性能面では検討が必要な場合があります。

ペンのグリップをはじめ、靴底や自動車の内装部品、医療、食品用のチューブなどに使用されております。

「オレフィン系エラストマー(TPO)」

TPOなどと表記されることもあり、こちらもスチレン系同様、比較的かなり普及しています。
自動車内装での使用量がとても多いです。

比重が軽く、ポリエステル系に次ぐ耐熱性を持ち、耐候性に優れています。TPOなどと表記されることがあります。

耐油性や耐摩耗性があまり良くありません。

自動車バンパーや建材シート類をはじめ、各種パッキンや包装フィルムなどに使用されております。

「ポリエステル系エラストマー(TPE)」

以前はTPEEなどと呼ばれていました。

耐薬品性や耐熱性が高く120°Cまで耐えるものもあり、疲労特性も強いことから耐久性が求められる製品に使用されています。また耐候性は劣りますが、低温でも柔軟である特性を持っています。自動車内部の

ゴム製品の代替品や、チューブ類、電気部品などに使用されます。

「ポリウレタン系エラストマー(TPU)」

中でも特に古くから使用され続けているエラストマーです。セグメントにポリウレタンが採用されていることから専用の軟質設備がなければストランド式のコンパウンドは困難な樹脂です。

材料は高価ですが機械的強度や耐摩耗性、耐屈折性に優れており、自動車の内装全般に使用されるほか、スポーツ用品などによく採用されます。

「ポリアミド系エラストマー(TPA)」

こちらはエラストマーの中でも強靭なことで知られ、耐摩耗性、耐薬品性に優れています。以前はTPAEなどと表記されていましたが現在はTPAとなっており、基本的にナイロン樹脂の特性を持っているので消音特性にも優れています。

しかしゴム弾性は低い上にとても高価なため、ギヤなどと使用範囲は狭く限られています。

「水素添加系エラストマー(SEBS)」

スチレン、エチレン、ブタジエン、スチレン樹脂といい、ゴム特性に優れ、耐候性、熱安定性、特性を持つ他、様々な樹脂との相溶性がよく、PPなどの耐衝撃性改質材に適したポリマーとしても知られています。

近年では、特に医療部材分野で塩化ビニル樹脂に代わる軟質素材に対する要求が高まっており、PPの樹脂の透明性を維持しつつ軟質化を可能とする改質剤として、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの需要が、伸びています。

エラストマーのメーカー

代表的なエラストマー樹脂を上市する各メーカーをご紹介致します。

三菱ケミカル株式会社 テファブロック、トレックスプレーン、ゼラスなど

アロン化成株式会社  アロストマー

太平化学製品株式会社 エラステージ  

クラレプラスチックス株式会社 EARNESTON アーネストン®

株式会社西田技研 FULXUS®




以上が代表的な熱可塑性エラストマーの概要となります。

まだ他にも特殊なエラストマー樹脂がありますので、調べていただければ情報はたくさん出てくると思います。とても幅が広いため深堀りしたい方はぜひピンポイント樹脂を選び、お調べすることを推奨します。

中定樹脂では熱可塑性樹脂において、汎用からエンプラ、スーパーエンプラまで、さらには今記事のエラストマーなど特殊樹脂まで幅広い加工、販売実績があります。

委託先でお困りの際はぜひ一度お問い合わせください。

参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/83/9/83_9_269/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/57/11/57_11_704/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/57/11/57_11_668/_pdf

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