こんにちは。
いつもお世話になっております。中定樹脂 林でございます。
いきなりですが、サーキュラーエコノミーという言葉をご存知でしょうか?
いま世界中で、材質問わず枯渇資源を循環させるための動きが活発になってきており、サーキュラーエコノミーという考え方へ転換が進められています。
脱炭素にも貢献するビジネスモデルとして注目を浴び、日本国内でも様々な取り組みが始まっています。
今後サーキュラーエコノミーを成長戦略に取り入れることはビジネスを行う上で必ず必要になって来るでしょう。
今日は私たちプラスチックを扱う事業者に焦点を当て、サーキュラーエコノミーというものを簡単に勉強したいと思います。
では、そもそもサーキュラーエコノミーと聞いて何を指すものかすぐに分かりますか?
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミーとは循環型経済のことを指します。
素材から製品まで全ての資源の価値を可能な限り長く維持出来るよう廃棄物の発生を最小限に抑える経済システムを意味しており、これまでの一方通行でモノを使う「直線経済」からの脱却を目指すためのものです。
従来の大量生産、大量消費という一方通行な経済の形であったリニアエコノミーに比べ
設計時から生産、消費、マテリアルリサイクルが循環し、『そもそも廃棄物自体を発生させない』という設計を盛り込んだ製品作りを促進するための考え方がサーキュラーエコノミーですので従来のリサイクルとはまた別の概念となります。
サーキュラーエコノミーの定義
すでに世界中でサーキュラーエコノミーへの移行が取り組まれていますが、代表的な定義としてイギリスにあるエレン・マッカーサー財団という国際的に有名なサーキュラーエコノミー推進機関として知られるところから3つの原則が掲げられています。
「Design out waste and pollution: 廃棄物・汚染などを出さない設計」
GHG排出、有害物質、水・大気の汚染や交通渋滞など経済活動による人の 健康や自然環境への負荷を低減する
「Keep products and materials in use:製品や資源を使い続ける」
設計によって製品・部品・素材の耐久性、リユース、再製造やリサイクルを進め、 経済の中で循環させる他、バイオ由来素材については経済システムと自然シス テム間を行き来させる
「Regenerate natural systems: 自然のシステムを再生する」
再生可能エネルギーの活用や土壌への養分還元など、非再生資源の使用
環境省 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/pdf/1_2.pdf
大気汚染になる焼却処分や新材の大量生産を避け、新たな製品はリサイクルしやすい設計にし、使用後も循環させること。
どうしてもリサイクルできない場合はバイオプラスチックや生分解性樹脂を採用するなど、環境負荷を抑える努力が求められるというイメージです。
経済界は『サーキュラーエコノミー』への移行による経済的利益を享受するために必要な、システム上の変化を生み出す上で中心的な役割を果たす(エレン・マッカーサー財団)
なぜサーキュラーエコノミーが必要なのか?
海洋プラスチック問題に温室効果ガス問題。さらに諸外国の廃プラスチック輸入規制など、様々な要因が重なり、国内で製造された資源は国内で循環させ続けなければ、いずれ地球全体や私たちの生活に悪影響を及ぼします。
「プラスチック資源循環促進法」施行の背景と大きく関わりがあり、気候変動問題や天然資源の枯渇問題などあらゆる環境問題を生み出してきた廃棄社会が背景にあるとされます。
プラスチック資源循環法の記事はこちら
広がる5つのビジネスモデル
我々プラスチックに携わる企業はこれからサーキュラーエコノミーへ移行していくとともに新たな事に挑戦しなければなりません。
従来の製造やリサイクル分野だけに捉われず、広い視野で出来ることを模索していくのです。
製品設計時からサーキュラーエコノミーを意識することが大きく求められていますが、いま既に製造が量産体制に入っているものでも工夫することで何か循環型製品への取り組みが出来るかもしれません。
サーキュラー型のサプライチェーン
いま最も企業で採用されているビジネスモデルの一つです。
サーキュラー型のサプライチェーンとは、再生可能な原材料やリサイクル率の高い原料を使用することで、環境負荷を減らすモデルのことです。
自然発電エネルギーやバイオ素材、リサイクル可能な樹脂材料などを用いて、コストダウンや、安定調達が可能となる。
回収とリサイクル
従来では廃棄されていた製品を再利用することで、新たな原料の使用料減や廃棄による環境負荷を目指します。
しかし、循環型設計に則りマテリアルリサイクルを目的とした製品や排出物を回収し、原材料に戻せたとしても、これだけでは新たに丈夫な製品をつくることは難しい場合が多いです。
物性の安定した再生材料を利用し、組み合わせコンパウンドすることで強度などの物性を保持した製品が出来ます。
これにより枯渇性のあるバージン材料を利用することなく新たな製品を作り出すことができます。
製品寿命の延長
修理やアップグレードによりまだ使用可能な製品を活用するためのモデルが製品寿命の延長です。買い替えの機械を減らすことで、廃棄物の発生、資源の消費を抑えることができる。
シェアリング・プラットフォーム
シェアリングプラットフォームとはモノや資産など価値あるものをシェアすることで収入を得るモデル。使用していないモノを他人に貸し出し、1つの資産を無駄なく活用し、資源の消費量を抑制する。
車やコワーキングスペースなど、最近は身近になっているビジネスモデルとなります。
サービスとしての製品
サービスとしての製品とは、製品自体を販売するのではなく、製品を利用できるサービスを販売し、使用者は利用に応じて料金を支払うというもの。
近年、サブスクリプション系のサービスは急加速しています。
これらの形を組み合わせることで最小限の資源から最大限の経済的価値を引き出すための仕組み作りがサーキュラーエコノミーに伴うビジネスの構想です。
このような取り組みは製造メーカーから販売→消費者→回収業者→再商品化事業者まで、すべての事業者が協力しなければ実現は困難です。
しかしコンプライアンスを徹底した回収までの仕組みを構築することが出来れば、あらゆる形でプラスチックは生き続けることが可能です。
では実際にサーキュラーエコノミーを取り入れた企業の事例を見てみましょう。
実際のビジネスモデル
国内外問わず、多種多様な業界でサーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ
SDGs推進に取り組む企業が増えてきています。
設計内容や規模により様々ですが、循環型への動きが加速しています。
有名な企業の取り組み事例を少し紹介しておきます。
スターバックス
スターバックスでは2018年より「Starbucks Greener Stores」という枠組みを発表し、対象店舗では廃棄予定だった素材を内装に使用したり、着用エプロンを再生プラスチックで作るなど「より緑に)という運営を世界中に拡大させています。
さらに耐久性の高いコップを取り入れ、貸し出すことで循環型プログラムにも取り組みます。
パタゴニア
パタゴニアはサステナブルな企業として有名です。
「worn wear」という製品を長く使用してもらうための取り組みを行なっており、使用済み製品をオンライン上で取引できる仕組み作りや、ミシンを積んだトラックで各地を回り、修繕などを行なってきました。
NIKE
ナイキは長年にわたって資源循環に取り組む企業として有名です。
ペットボトルからなる再生ポリエステルを使用した製品づくりを行なっており何十年以上、廃棄物削減に貢献しています。
その結果、何億という量のペットボトルが埋立地行きを回避しています。
ブリヂストンタイヤ
2050年以降を見据えた環境目標に、製品の原材料を100%サステナブルマテリアル化を設定しており、軽量化や長寿命化で「資源の使用料減」「再生ゴムで資源循環」「天然ゴムの生産性向上など再生可能資源の拡張」の3アクションを進めている。
まとめ
本記事でご説明したサーキュラーエコノミーの考えは、もともと欧州を中心に発展してきました。
ドイツでは再生プラスチックを10%以上使用しているICT機器のみを公共調達の対象としフランスでは再生プラスチック以外の包装材に対して罰金が科されるなど、ヨーロッパではサーキュラーエコノミーが元となる規制が既に政府主導で進められています。
日本でもようやくテレビやニュースで政府の環境エネルギーに対する取り組みや、再生可能な素材を商品に導入する企業が注目されたりするなど、サーキュラーエコノミーの知名度は上がっています。資源循環促進法の施行に伴い、加速しているようにも見えます。
しかし既に国民が意識しているリサイクルと比べると、サーキュラーエコノミーの取り組みはそれほど浸透しているとはいえません。それに、環境に負担をかけて生産される商品に対して不買運動が起きるなどの企業の責任を重視する雰囲気もまだありません。
現在、サーキュラーエコノミーについてよく議論されているのは、脱プラスチックや使用原料の削減が多いように感じます。使用料の削減はサーキュラーエコノミーの重要な一部分ではありますが、資源を循環させるまでがサーキュラーエコノミーです。循環という視点は、製造事業者がさらに力を入れていくところです。
つくる側が、消費者による使用後の製品にも関与することが重要となります。
だいぶ簡単にまとめて記事にしましたが、これからの日本国内では、プラスチックをはじめとする様々な枯渇資源や持続可能なエネルギーなどに焦点を当て、サーキュラーエコノミーの取り組みを拡大させる余地がまだまだ残されているのではないでしょうか。。。