「2050年カーボンニュートラル宣言」
新たにプラスチック資源循環促進法が施行されました。
こんにちは。いつも大変お世話になりまして、ありがとうございます。
本日は、ここ最近さらに話題に上がることが増えてきたプラスチック業界を取り巻く環境問題やそれに伴う新法律について発信していきます。
私たち人間の生活に今や欠かすことの出来ないプラスチック。
現在、そのプラスチックが様々な形で環境や生態系に大きな影響を与えているとして問題になっています。
日本国内でもSDGSやサーキュラーエコノミー(循環型)等という言葉が身近になってきている中、2022年4月より新たな法律「プラスチック資源循環促進法」という新しい法律が施行されました。
加速するサーキュラーエコノミー
本日はその新法「プラスチック資源循環促進法」の内容や背景について皆さんと少し勉強したいと思います。
「プラスチック資源循環促進法」の施行背景
今回の新しい法律施行の背景には色々な要因があります。大きく3つの要因とそれに伴う目標を簡単に説明していきます。
①「海洋プラスチック問題」
少し前に、欧米で砂浜に打ち上げられたクジラ。
その死体から出てきたのは100kgを超える廃プラスチック。
このニュースは世界中に衝撃を与えました。
海洋プラスチック問題は世界中で注目され、SDGsの14番目の目標にも該当する解決すべき課題であります。
プラごみ問題を解決するため、18年に開かれた主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は30年までにすべてのプラスチックを再利用や回収可能なものにし、40年までに100%回収を目指す「海洋プラスチック憲章」を採択しました。ただし、欧州諸国とカナダは署名しましたが、日本と米国は署名しませんでした。
経済社会使用後廃棄されたプラスチックが適正に処理されないと、海へ流出しプラスチックごみとして漂流します。
それにより大量のプラスチックが浜辺に打ち上げられている写真を数え切れないほど目にしてきました。
さらに海洋生物がそれらの廃プラスチックを飲み込み続けることで絶命し、海の生態系に影響を及ぼしています。
さらにプラスチックは分解速度が遅く、マイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下のサイズになったあとは、数百年間自然分解せずに残ると予測されているほどです。
そして、人間の体内にもマイクロプラスチックが蓄積されているとして問題になっております。私たち自身もその当事者であります。
②「温室効果ガス問題」
プラスチックはその製造過程や、その後の焼却処分時に二酸化炭素を排出するということで地球温暖化やその他環境に悪影響をもたらすとして問題になっています。
③「諸外国の廃プラスチック輸入規制」
これまで日本は、多くの廃プラスチックをアジア各国へ輸出していました。
しかし2017年、中国が輸入を規制し始めたのを境に、変わりになると見込まれていた東南アジア・南西アジアでさえも、続々と輸入規制を強化しています。
それでも途上国における被害の現状はまだ厳しいといわれます。
アフリカや東南アジアへは、いまだに再利用がほぼできない状態の電子機器が中古品として輸出され、現地の子供から老人までの安価な労働力によって製品を分解し、取り出した金属を海外へ売るというビジネスを続けています。
こういったことに対して日本は、これまで以上に責任を持って廃プラスチックの国内処理を進めなければなりません。
2050年カーボンニュートラル宣言
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素など、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量と、吸収量のバランスをとることを言います。
カーボンニュートラルの取り組みは世界中の国々で実施されており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」の目標を掲げています。
カーボンニュートラルは排出をゼロにするということではなく、森林等による吸収量をプラマイすることで、排出と吸収で相殺させるということです。
この度の新法施行の背景にはこの取り組みも含まれます。
私たちの身の回りにある数々のプラスチック。
使っては捨てるという事を繰り返して行くと環境は破壊されていきます。
そして必ず私たち人間の生活に影響をもたらしてしまいます。
そこで、今までよりも合理的なプラスチックの使用を促進するべく「事業者」「消費者」「国」「地方公共団体」全ての関係主体が参画し、相互連携しながら相乗効果を高めていくことが求められております。
プラスチック資源循環促進法の概要
政府はプラスチックの資源循環等を総合的、計画的に推進するために
- プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源がに質する環境配慮設計
- ワンウェイプラスチック使用の合理化
- プラスチック廃棄物の自主回収、再資源化。等
を基本方針として策定しています。
冒頭でのCO2問題や海洋プラスチック問題、それに加えて日本は国内で使わなくなった廃プラスチックをこれまで国外に資源として輸出していましたが、国際条約によりアジア諸国が受け入れを禁止しはじめました。
これら背景など様々な問題から、今までと違い資源を循環させるだけでなく「そもそも廃棄物を出さない」という
サーキュラーエコノミー(循環社会)の考え方に乗っ取った同法の原則として
【3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(リニューアブル】というあまり聞き慣れない言葉が加わり掲げられています。
3R に加わるRenewable
Reduce(リデュース)ゴミの発生を抑える
Reus (リユース)繰り返し使う
Recycle(リサイクル)資源として再利用する
Renewable(リニューアブル)再生可能資源に変えていく
リニューアブルとは一度の使用で廃棄物となるプラスチック素材を見直し持続可能なプラスチック材料に切り替えていく。
つまり、石油という枯渇資源から再生可能な資源に変えていくことで、カーボンニュートラル社会を実現させようということです。
※サーキュラーエコノミーとよく一緒に使われるリニアエコノミーという言葉がありますが、これは「直線型経済」のことです。
リニアエコノミーは資源から製品を作り、不要になればそのまま廃棄するという一方通行で完結してしまう一方で、サーキュラーエコノミーは円を描くように資源を循環させていくことがテーマとされています。
この従来のリニアエコノミーでは大量生産、大量消費と確かに利益は上がりますがそれと引き換えに環境破壊や資源の限界が訪れることになります。
この法律の目的は、プラスチック製品の設計から廃棄処理に至る全てのプロセスにおいて「3R(リデュース・リユース・リサイクル)+Renewable(リニューアブル)」を促し、サーキュラーエコノミーへの移行を加速することにあります。
プラスチック資源循環促進法における5つの措置
ここからは事業者目線で、実際にどういうことが求められるのか?簡単に説明させていただきます。
この新法の概要は立場別に大きく5つの措置が講じられることにあります。
- プラスチック使用製品設計指針と認定制度
- 特定プラスチック使用製品の使用の合理化
- 製造、販売事業者等による自主回収、再資源化
- 排出事業者による排出抑制、再資源化
- 市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化
上記の5つが大まかな概要となります。
事業者に求められること
01…プラスチック使用製品設計指針と認定制度
商品を設計、製造する段階で環境配慮設計に関する方向で動いて下さい。
それらの計画を策定し、認められたら出来る事が増えますよ、という感じです。
具体的には、製品の減量化や、形状やサイズを見直して収集しやすいようにしたり、バイオプラスチックの採用を検討するなどです。
02…特定プラスチック使用製品の使用の合理化
無料で配られるワンウェイプラスチック(使い捨て)を提供する業者は排出抑制に取り組まなければならない。
飲食店でもらえるスプーン、フォークにストロー。宿泊施設でもらえる歯ブラシやカミソリ。
これらを安易に有償で提供することなく、工夫して下さいとの事です。以下に例を挙げておきます。
「ワンウェイプラスチックを提供する事業者の対応例」
- 有償で提供する。
- 必要か不要か確認実施
- 不要とした消費者への還元等を行う(ポイントなど)
- 製品設計や原材料の種類について意識して工夫された製品を提供する。
- 繰り返し使用が可能な製品を提供する
03…製造、販売事業者等による自主回収、再資源化
プラスチックやプラスチック使用製品を製造する事業者は資源循環を促進する為に、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収、再資源化に取り組んで下さい。といったふうに下記のイメージを意識しながら事業に取り組むことが求められます。
弊社では自社商品である農業資材の使用後回収を行っており、現在は任意ですが更なるシステム化を進めております。
04…排出事業者による排出抑制、再資源化
この事業所というのはお店や工場、事務所など多くが対象となります。今までもそうですが、より一層、プラスチック使用製品廃棄物を抑制することを考えなければいけません。
ここで、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250t以上ある排出事業者は、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に関する目標を定め、具体的な取り組みを計画的に行うことが求められます。
05…市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化
これは今まで既にあった「容器包装リサイクル法」と同じような事を他のモノにも活用して良いから、再商品化が可能な事業者と協力しながら積極的に再商品化計画など進めてね。といった要素が含まれます。
実際の企業モデル
「使用素材の代替」
マクドナルドやスターバックスではストローが紙素材のものに置き換えられています。
家具大手イケア(IKEA)は、参加の店舗やレストランで提供されるストローや保存袋など使い捨てプラスチック製品7種類を全廃する計画を発表した。
2030年までに原料をすべて持続可能なものに切り替えることを目標とする企業が多い。
「ペットボトルの再資源化」
少し前からセブンイレブンの前にペットボトルを回収する機械をよく見かけますよね。
緑茶商品のペットボトルtoペットボトル循環スキームでこれにより1本あたり25%のco2を削減することが出来るそうです。
消費者は飲み終わったらキャップとラベルを分別し洗浄してから回収機に投入します。
「使用済みプラ回収実証実験」
花王グループでは2019年よりKirei Lifestyleplan(キレイライフスタイルプラン)を策定し、その中で「ゴミゼロ」への取り組みとして「MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」を行なっています。
これらはほんの一部で、こういったサーキュラーエコノミーに関する動きは更に加速していくと思われます。
規模の大小はありますが、インターネット上の様々な記事で沢山の事例を知ることができます。
消費者目線では何が変わる?
日常生活では高い意識を持ち、今まで以上にゴミの分別に取り組みます。自治体ごとに違う点もありますが、お住まいの地域で決められた方法に則り、個人も責任感を持つことが求められてきます。
お店では今まで当たり前に貰っていたスプーンやストローが有償提供になったり材質が違うものに変わったり、プラスチックを使わない動きもで出てきています。
日常生活にマイ買い物バッグ、マイストローなど繰り返し使えるものを、生活用品も出来るだけ使い捨てずに使うことが推奨されており、政府は従来の3Rの心掛けをはじめ、一般消費者にもエコの意識を求めることで持続可能な社会の実現を推進します。
最後に
本記事で説明させていただいた新法はプラスチックの循環を促進するためのものであり、規制するものではありません。
無駄なプラスチックの使用、排出をなるだけ抑制し、環境に負荷をかけることなく様々なモノや素材と共存していく。
プラスチックが人類にとって必要不可欠な素材である今、正しく循環させ使用し続けるためのルールを社会全体で守っていきましょう。